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東京ボランティアセンター及び淑徳短期大学視察報告
 
徳島県社会福祉協議会 佐伯明彦
海南町社会福祉協議会 前野洋子
 
■東京ボランティア・市民活動センター報告
  取材:東京ボランティア・市民活動センター副所長 安藤 雄太 氏
○東京ボランティア・市民活動センター(Tokyo Voluntary Action Center = TVAC)は、1981年に「東京ボランティア・センター」としてさまざまな分野のボランティア活動の推進・支援を目的として設立され、社会福祉法人東京都社会福祉協議会が運営している。
○1998年には、現在の「東京ボランティア・市民活動センター」に名称を変更し、従来の活動に加え、市民たちが主体となり営利を目的とせず、他者や社会に対して貢献する市民活動やNPO(民間非営利団体)の推進・支援にも領域を広げた活動を行っている。
○おもな活動として、個人や団体を対象として、ボランティア・市民活動に関する相談事業を行う他、情報紙「ネットワーク」の発行やホームページなどによる情報事業、ボランティアセンターや社会福祉施設のボランティア・コーディネーターなどを対象とした人材育成・研修事業、多様な課題に取り組むボランティア・市民活動の研究成果である「東京ボランティア・市民活動センター研究年報」の発行などの調査・研究事業、毎年千人以上の参加者が集まり、ボランティア・市民活動の交流と研究協議が行われる「めっせ・TOKYO」の開催などの交流事業をすすめる他、ボランティア・市民活動に対して資金的な支援を行う「ボランティア基金」事業や、民間助成団体との連携と研究協議を行っている。
○また、各種プログラムとして、学校における「総合的な学習の時間」のプログラム開発などをすすめる児童・生徒のボランティア活動の推進プログラムや、“夏!体験ボランティア”、大学・短大などによるボランティア活動推進などの青年ボランティア活動の推進プログラム、企業や労働組合との協働による企業ボランティア活動の推進プログラム、大きな活躍が期待されるシニア世代を対象としたシニアボランティア活動の推進プログラム、災害ボランティアの推進を目指し、東京災害ボランティア・ネットワークとの連携による災害ボランティア活動支援プログラムに取り組む他、ボランティア・市民活動団体との課題別の協働事業として、食事サービス、移送サービス、宅老所・ミニデイサービス・グループホームに関する研究協議会など、社会的課題に対応した事業を開催している。
○近年では、海外のボランティアセンターや民間非営利団体、国際機関との連携もおこなっている。
○大学・短大におけるボランティア活動が広がるための活動しては、@相談コーナー〜学生ボランティア活動相談。Aボランティア・市民活動情報掲示板の活用。B毎月発行の情報紙『ネットワーク』やホームページなどにより学生ボランティア活動についての情報提供。C大学・短大の中では、ボランティアセンターの立ち上げなどキャンパスにおけるボランティア活動推進のしくみづくりがすすめられ、こうした大学・短大とそのボランティアセンターとの連携・協力をすすめている。D地域やキャンパスなどさまざまな場面でボランティア活動をすすめる9人の学生たちのボランティア活動事例集である、ガイドブック「学生ボランティア最前線」をセンター内で配布している。E大学・短大でのボランティアに関する取り組みをすすめる上での現状と課題について、学生・職員・地域などの視点から幅広い意見交換と、毎年開催の『大学・短大ボランティア活動支援研究協議会』に向けた企画づくりと課題共有の機会として開催。F大学・短大でのボランティア講座など増える一方、地域貢献をしながら体験学習(サービスラーニング)を位置づけ、大学教育の一環とする動きもある。こうした取り組みをすすめる大学・短大とのネットワークづくりと、活動の広がりを目指した研究協議会の開催。
○今求められる大学の役割は、大学がいかに市民活動をするかである。それぞれの教育領域に応じての専門性を活かし、地域社会へ貢献していくことで、地域から支えられる大学となり、併せて、社会の中で具体的な活動や体験を通して学生たちも育てられる。そのパイプ役を担うのが、ボランティアセンターであり、ボランティアコーディネーターである。
 
■淑徳短期大学ボランティア情報室の活動内容
  取材:淑徳短期大学社会福祉学科教授・学生副部長    塩野 敬祐 氏
     淑徳短期大学ボランティア情報室コーディネーター 桜井 伊佐子氏
○ボランティア情報室設立まで
淑徳短期大学では創設以来「共生」を基本的な理念とし、学内外において広く実践することを理念としてきた。また、1992年には、学園創設100周年記念事業の一環として、「セーブ・ザ・チルドレン」に参加するなど、学園あげての支援体制のもと「共生」の具体的な実戦に向けて取り組んでいる。1993年4月、社会福祉学科において、学生ボランティア活動を正規の履修単位として認定する「ボランティア・ワーク」が開設された。この「ボランティア・ワーク指導」(前期)、「ボランティア論」(後期)、「90時間のボランティア活動実践」(通年)の3つの内容をセットにさせた独自カリキュラムを組んだ。この科目を開設されるに先立ち実施した、学生への「ボランティア活動に関するアンケート調査」で、3人に1人は、すでに何らかのボランティア活動に参加していたが、経験のなかった理由としては、「関心はあるがきっかけがなかった」「どこに相談すればよいのかわからなかった」が多くあげられた。また、活動の経験をもつ学生は、「よりよい活動のアドバイス」「さまざまな活動先の紹介」「活動に必要な知識や技術」などの情報提供を求めていた。これらのアンケートが契機となり、より多くの学生にボランティア活動へ参加する機会を提供し、情報収集や提供、需給調整、相談などにあたる選任の職員を配置するボランティア情報室を設立。
○ボランティア情報室の組織・機能
(1) 組織(職員)
@室長、ボランティアコーディネーター、事務職員、A学生スタッフ(学生スタッフはボランティア活動支援に関心のあるもので、ボランティアコーディネーターが選任する。)
(2) 業務
@福祉・ボランティア学習の支援、Aボランティア活動に関する相談と情報収集・整理・提供及び連絡調整、Bボランティアプログラムの企画・運営、Cボランティア活動に関する調査・研究、Dボランティア活動に関する地域の社会福祉施設等との連携・協働活動、Eその他必要とする業務
○ボランティア情報室の今後の目標と課題
情報室は、ボランティア活動の情報提供にとどまることなく、今後は地域にも開かれた新しい出会いの場としての役割を果たしたい。さらに、ボランティア活動を実り多い活動とするために必要とされるトレーニングを、大学の専門性を活かして実施する。そのための環境整備(スペース・人・設備など)が重要。また、学外利用者も徐々に増えてきている現在、関連する当事者や地域のさまざまな団体・機関等とのなお一層の連携が必要。
淑徳短期大学ボランティア情報室の 利用状況
                 
    年度
内訳

 
6

 
7

 
8

 
9

 
10

 
11

 
12

 
13

 
学内(人) 637 760 749 875 695 862 707 709
   (%) 79 75 70 65 58 60 58 58
学外(人) 169 256 317 471 495 585 509 512
   (%) 21 25 30 35 42 40 42 42
合計(延人数) 806 1016 1066 1346 1190 1447 1216 1221
 
○情報室予算 教育研究費・定時316千円(専任のボランティアコーディネーター設置費は除く)
 
■明治学院大学ボランティアセンター活動内容
  取材:明治学院大学ボランティアセンター(白金校舎)
       ボランティアコーディネーター 大島 隆代 氏
○ボランティアセンターの誕生 
120周年を迎えた明治学院が、記念事業のひとつとしてボランティアセンター創設を起案、準備のための助走期間を経て、1999年から活動をはじめた。
明治学院が目指した理念は、キリスト教精神を土台としたリベラリズムの精神であり、グローバリズムの実践であり、賀川豊彦を代表とする、学生たちのセツルメント活動などに代表されるこれまでの伝統と、120周年の新たな決意のもとに誕生した。
○目指すもの
ボランティアセンターは学生のボランティア活動を大学としてサポートし、単純なボランティア活動参加にとどまらず地域社会の現実を自分の目で見て学びとり、その学びが研究意欲や人格(日常生活)そして進路へと還元されることを目標としている。
○具体的な目標
市民社会の発展のため、市民として責任ある自主的な生き方や公共心(社会をよりよく変えていく意欲とリーダーシップ)を育てる。
学生のボランティア活動や大学の知的資源などを生かし(地域)社会への貢献に努める。
○これまでのとりくみ
A.ボランティア活動の紹介、B.ボランティアセンター学生スタッフの育成と活動、C.地域と学生の橋渡し、D.ワークキャンプの実施、E.ボランティア公開講座、F.ボランティア公開講演会、G.ボランティアグループ合同説明会、H.地域団体との協力
○ボランティアセンターの役割
地元でのボランティア講演会の司会や社会教育講座への講師依頼、一部授業への参加など、学生へのボランティア活動紹介にとどまらない活動が要求されている。
ボランティアセンターの仲介に限定されないとりくみが多く生まれ、学生も教職員も持てる力を社会へ還元していくなかに、地域と共に歩む大学の未来の姿が見えるし、ボランティアセンターの役割も見えてくる。 
○今後の課題
大学としてボランティア教育を普及させていくことは、地域社会の一員としての大学を目指す一つの手段として大変有効。しかし、全学的なとりくみには教職員のボランティア教育への理解と協力が欠かせない。あらゆる機会を通じて少しでも多くの理解と協力を得られるよう、教職員にとっても魅力ある企画づくりも必要。
(1) 運営への地域からの参加
センターは、その規程上学長を代表とする全学的な運営委員会と、センター長の諮問機関である活動推進委員会を有してる。具体的な活動を検討する活動推進委員会では、学生や地域の有識者も構成員として参加することが可能となっているが、学生の参加は実現しているが、今後さらに地域有識者の活動推進委員会への参加を実現したい。
(2) ボランティア教育プログラムの開発
大学でボランティア教育を実施するには、学生への教育目的と地域の課題解決という、2つの目標を同時に達成できるプログラムを開発する必要がある。地域と大学の連絡協議会といったルートの開発が、学生を紹介する上で必要。
(3) ボランティア教育研究成果の社会への還元
調査を積み重ねながらボランティア教育の効果を科学的に研究し、その成果を社会へ還元していくことを目指したい。
(4) 場の提供とネットワークの形成
ボランティア活動に参加している学生や大学でのボランティア活動普及にとりくんでいる学生、教職員、関係機関を対象として、意見情報交換の場を提供し、ネットワークの形成に向けて寄与していきたい。また、本学のとりくみを進んで情報公開し、様々な形で情報を共有することで、高めあって進んでいきたい。
○予算 事業費約2000千円(専任のコーディネーター2名とアルバイトの人件費を除く)
 
■立教大学ボランティアセンター視察報告
  取材:立教大学ボランティアセンター・事務局 鈴川 克仁 氏
○立教大学ボランティアセンターは平成15年6月に開設された。開設には、立教大学の人間教育がめざす、自己に内在する使命を自覚して自ら他者の中に出て行き、しなやかな倫理を持って他者と協働しながら、さまざまな課題を解決しようとする実践的志向性を原点とした。ボランティアの原点もまたそのような人間をはぐくむことにあると考えたからだ。
○また、ボランティアセンターの誕生以前から、立教には、活発なボランティア活動の歴史と伝統がある。大学のチャぺル団体や研究所および各クラブの活動、レディスクラブなど、現在もさまざまなグループがいろいろな挑戦をしている。
センターでは、このような歴史と活動を結びつけながら、学院全体としてのボランティア活動を展開してゆく。
○ボランティアセンターの活動
(1) ボランティア活動の企画・運営(ボランティアセンターの主催や、他の団体との共催によるボランティア活動の企画・運営)、(2) ボランティア講習会や学集会の実施(点字、手話、その他ボランティアに必要な技術の講習会や、ボランティアの活動に関わる学習会を実施)、(3) ボランティア募集情報の提供(学内の掲示板、登録者へのメーリングリストなどにより、各種のボランティア募集情報を提供)、(4) ボランティアグループの情報交換(学内外のボランティアグループ及び活動に関心を持つ個人間の相互の情報交換の場の提供)、(5) ボランティアに関する相談(ボランティアコーディネーターや、学生スタッフにより、ボランティアに関する様々な相談)
○運営等
(1) 学生スタッフについて
ボランティアセンターの運営を手伝って下さる学生ボランティアを募集
(2) ボランティア希望の方へ
センター主催の企画等に参加される方は、事前に当センターへの会員登録、ボランティア保険への加入等をお願いする
(3) 賛助会員について
センターでは、活動を資金面から援助して下さる方に、賛助会員の登録制度を設けている
○予算 事業費約4000千円(専任の事務職員、コーディネーター、アルバイト職員費を除く)
 
■所  感
○大学の役割の大きな視点として、ボランティア活動の支援を掲げ、それぞれの事業展開をしている、淑徳短期大学、明治学院大学、立教大学、また、各大学でのボランティア活動支援を、ネットワークづくり、研修等で、陰になって支援をしている、東京ボランティア・市民活動センターの取り組みを見学、コーディネーター等からお話を伺った所感を述べさせていただく。
○大学の使命は大きく分けて、(1) 教育、(2) 研究、(3) 社会貢献、にあると言われている。これまでは教育と研究が強調されていたが、近年は、大学の社会貢献への期待も大きくなっている。「大学の社会化」が求められているとも考えられる。これらの期待にこたえ、教育、研究、社会貢献すべてにわたって大きな柱となり得るのが「ボランティア」という視点だと考える。
○大学審議会答申において、ボランティア活動の教育的意義を明らかにし、大学教育においても授業など多様な方法でボランティア活動の積極的取り組みをおこなう必要性を提言している。また、「学生の多様な体験活動の充実」のなかで、大学と企業とが協力して学生に自らの専攻や将来の職業に関連した就業体験を与えるインターンシップ制度を積極的に導入すること,ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を授業に取り入れたり学生の自主的活動を支援することに大学が積極的に取り組むことも重要である、と提言している。(21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―答申)(平成10年10月26日 大学審議会))
○ボランティア活動は青少年に4つの成長の機会を提供すると言われている。「(1) 精神的成長の機会の提供(青少年が人生の意味や目的、人間社会の異なる価値観について知り理解するのを助けることを通じての精神的成長の機会を提供する)、(2) 道徳的成長の機会の提供(青少年が社会における善悪や正義、公正、権利と義務などの問題についての批判的眼をもって正しく認識できるよう助けることを通じての道徳的成長の機会を提供する)、(3) 社会的成長の機会の提供(青少年が分別をもった有能な社会の一員になるために必要な理解やスキルを習得することを通じての社会的成長の機会を提供する)、(4) 文化的成長の機会の提供(青少年が自分たちの属するさまざまなグループの性質や役割を理解するのを助け、多様性と相違を尊重する気持ちを奨励することを通じての文化的成長の機会を提供する)。このように、ボランティア活動は、地域社会や地球社会全体を教室としながら、@自己への探求と新たな自己の発見、A学習成果の社会への応用と発展、B生活課題や社会問題への理解と解決のための貢献の3つの視点から、未来の教育活動に新しい活力を生み出し、「静かな教育改革」をすすめていく原動力になるであろう。」(社会福祉法人 世田谷ボランティア協会副理事長 興梠 寛:大学とボランティア 財団法人 内外学生センター発行)
○ボランティア活動の重要性は多く視点で述べられているが、大学で進める上で「科目として実施」「ボランティアセンター」等を設置するなど、広めるシステム作りが考えられる。
○全国の大学・短大の教務担当職員に対して「2002年度のボランティア関連科目の開講コマ数はいくつか。」(なお、ボランティア関連科目とは、この調査では、@ボランティアを行うことを主な目的とした科目、Aボランティアについて学ぶ科目としている。)との質問した回答結果を見てみると、全体としては、27.9%の大学・短大で開講しているが、大学・短大別に見ると、大学では32.5%、短大では21.6%となっている。設置別に見ると、国立大学38.2%、私立大学35.2%、私立短期大学23.3%、と続く、全体で見ると国立33.3%、私立29.7%、公立8.9%となっている。(学習院大学教職課程長沼研究室 長沼 豊氏調査「大学・短大における関連科目についての実態調査(2002年度)」報告書から)
○大学におけるボランティアセンターのタイプは、(1) 大学当局が建学精神の実践と高揚を目的として設立(立教大学、明治学院大学)、(2) 学生が自主的な活動の延長線上に組織したもの(国士舘大学、神戸大学、早稲田大学、亜細亜大学)、(3) 学生が立ち上げ、大学がハード面などのサポートをし、運営は基本的には学生に任せている(大正大学、関西学院大学)がある。(亜細亜大学 教授 栗田充治:大学とボランティア 財団法人 内外学生センター発行)だだ、今回の視察での感想ではあるが、スペースの確保と専任のコーディネーターの配置は大きな力となり、不可欠と考える。
○立命館大学産業社会学部と京都市社会福祉協議会との協同学術協定により、1999年から「ボランティアコーディネーター養成プログラム」を共同開催している。2002年度からは、京都醍醐ライオンズクラブも参画し、三者の学術協定として養成プログラムを実施している。地域・団体との協働事業も大きな方向と考える。
○「ボランティア」視点は、これからの大学運営面からも不可欠である。しかし、推進方法等はその大学の置かれた地域、目指すべき方向、歴史等により千差万別である。
 
 
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